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4/20 ワンドロ [ちょっぴり小話]

(擬人化注意)

ツイッターの企画 「#ギリヴ深夜のお絵かき60分一本勝負」
1時間で指定されたお題の絵を描く楽しい企画
イラスト限定の企画ですが、文章でひっそり参加させていただきました

お題は「よそのこ」

クリーム色のPなしジュラファントと、ムシクイのおちびさん
クリームパフがまだ1歳になったばかりのころ

   
* * *
 

見れば見るほど、不思議だと思う。
種類が同じ、色も同じ、帽子も同じでも、僕たちは少し違っている。
趣味嗜好が似通っていても、何かが違う。それは物の考え方だったり、言葉の言い回しだったり、技の使い方だったりする。同じようなレイアウトが好きでも、同じにしたことはない。
どうしてだろう?
お気に入りの林檎の木の下で、膝の上に広げていた大きな本を閉じて、くるりとつむじの巻いたクリーム色の髪を傾げて、クリームパフは考え込んだ。
だって同じ種類なのに、外見だって全然違う。
その違いは明らかで、考えれば考えるほど、どんどん不思議に思えてくる。
クリームパフはぽすんと後ろに倒れて、林檎の木の立派な幹に背中を預けた。
さっき読んだお話に出てきた探偵みたいに腕を組んで、大人みたいな低い声を出してみる。
「うーむ」
そうすればぴかっと答えをひらめくかとおもったけど、そううまくはいかないみたいだ。
変な声を聞きつけてやってきたのは、ぴかぴか光る電球ではなくて、この前の冬から一緒に住んでいるムシクイのジャッキーシューだ。
ドウシタ?と言いたげに、パフと同じように首を傾げている。
「うん。僕と他のジュラファントの違いについて、考えていたんだ」
シューの体を両手で軽々と抱えて、呼んでいた分厚い本の代わりに膝の上に乗せて、クリームパフは話し始める。
「リヴリーアイランドの中に、ジュラファントはたくさんいるよね?それはまあ、多くはないけど、たくさんいるよ。でもみんな違うんだ。色は同じだったりもするけど、それでもだいぶ違うよ。本を読んでいたら、だんだん不思議に思えてきて、どうしてなんだろうって思ったんだ」
ジャッキーシューが足をばたつかせる。大きな反論にクリームパフは笑った。
「確かにそうだね。ジュラファントはほとんどが青い色だから。まだ僕みたいな、クリーム色のジュラファントは見たことがないよ」
言って、僅かな寂しさを埋めるように、パフはシューにぽすんともたれかかる。
「本当だよ、みんな違うんだ。おんなじように、0と1で作られているのに。おんなじムシを食べているのに、おんなじじゃないんだよ。どうしてだろう?」
ムシクイだってたくさんいるのにねと、パフはシューの後ろ頭をぽんぽんと撫でる。シューは気持ちよさそうに目を細める。
秋霧のたなびく島の周囲には今日も濃い霧がたなびいている。台風の目のようなこの中心には春の日差しが差し込んでいて、少し湿っているけれど、ぽかぽかしていて心地良い。
難しい事を真面目に考えているのに、少し楽しい。膝の上の体温が混ざり合って、ますますあたたかくて気持ちいい。
午前中いっぱい走り回っていたシューが、小さな寝息を立て始めた。
微笑んで、シューを起こさないように気をつけながら、クリームパフは自分の眼鏡もそうっと外して横に置く。なんだか眠くなってきた。木々が揺れる音を聞きながら、パフもゆっくりと目を閉じる。
目を閉じると、ふとあたたかいものを感じた。
膝の上とは違うもの。木漏れ日とも霧とも違う、内側のもの。
自分の内側と強く繋がっているもの。
「飼い主」。
ああ、そうか。
目を閉じて、眠りに落ちかけたまま、クリームパフはにっこりした。
みんな、飼い主が違うんだ。だから同じ種類でもこんなにみんな違っていて、独特で、個性的で、楽しいんだ。きっとそうだ。
クリームパフは嬉しくなって、ふわふわと夢の世界に沈んでいった。
夢の中には飼い主の気配も一緒についてきた。だから余計に嬉しくなった。
春のそよ風と淡い木漏れ日、季節外れの爽やかな霧が、2匹の寝顔を優しく見守っていた。



* * *


よそのこを描く方ばかりだろうと思い、あえてお借りしない方向で進めました。
原形はほとんど同じなのに、よそのこは飼い主さんの個性が溢れて非常に魅力的だと思います。
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