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5/10 ワンドロ [ちょっぴり小話]

(擬人化注意)

ツイッターの企画 「#ギリヴ深夜のお絵かき60分一本勝負」
1時間で指定されたお題の絵を描く楽しい企画
イラスト限定の企画ですが、文章でひっそり参加させていただきました

お題は「パズルカタハメ」

短気で陰気な黒のPジュラファントと、初対面のパズルカタハメ
うららかな春のお布団の攻防戦

  
  
* * *
 

「起きろ貴様」
「嫌です」
「起きろと言っている」
「嫌だと言っているんです!まだ寝てたいよう」
開け放った障子から五月の心地良い風が吹き抜けてゆく、うららかな昼下がり。
自分の部屋で、侵入者である黄色の布団を見おろし何度目かの会話を繰り返して、外郎はついにぶちりと切れた。
室内でも着ている黒外套を翻し、ジュラファントらしい怪力を発揮して敷布団をぐいと引く。
テーブルクロス引きの要領で見事に敷布団は抜き取られ、畳の上には掛布団と中身だけが残された。
「うええ、何したんですか。ざらざらする。寝心地悪いよう」
文句を言う布団がもぞもぞと動いた。
外郎は更に手を伸ばし、寝返りを打つ長い首をぐいと掴んで無理矢理体を起こさせる。
抵抗を繰り返した掛布団は、中綿越しに一発反撃を食らって大人しくなった。
「何するんですか。病人なのに」
畳に正座させられた中身、勝手に部屋に上がり込んできた侵入者、つまりはパズルカタハメは、背中に羽織った黄色い掛け布団を胸の前でかきあわせた。
まだ比較的若いリヴリーだった。リヴリーの外見・精神年齢と実年齢は一致しないものだが、マナーがわからないような生後日数ではないようだった。おそらくはトランシロン組だろう。
くしゃくしゃになった黒髪を直すでもなく、緑の丸い目をわざとらしく細め、けほけほと咳をしてみせてくる。
「ああ、体がだるい。頭がぐらぐらする。寝ていないと」
春眠暁を覚えず、昼過ぎとはいえ日差しも良い日だ。十分すぎるほど眠気を誘う。外郎は頷いた。
「是非とも戻ってそうしてくれ。何なら薬屋を紹介してやる。酒癖は悪いがなかなか美人だ。ってここで寝るな!敷布団を求めるな!ええい、自分の島に帰れと何度言ったら理解するんだ貴様!!」
「ひええ!」
すぽん、と音がしそうな勢いで、パズルカタハメは布団に潜った。
外郎が怒ったのが怖かったのか、単に大声が怖かったのか。頭や尻尾を引っ込めたまま布団の端を掴んでいるようで、布団を振っても出てこない。
「こらこら、驚かせてはいけないよ、ウィロウ」
どこか楽しげな声がした。
開けたままになっていたふすまの間を通り抜け、ふよふよとモチコマが入ってくる。
いつも通りの余裕をたたえた表情で同居人の外郎を見おろして、笑うようにくるりと一回転する。
外郎はちらりとも見ずに凄んだ。
「ヨキか。邪魔をするな。さもなければレイアウトから外すぞ」
「おお、こわい」
さほど怖くもなさそうに善哉は言って、ふよりふよりと布団の上空に移動する。
「パズルカタハメを驚かせてはいけないよ。臆病なところのある種族で、驚くとすぐに引っ込んでしまうと書いてあったからね。先日更新されたリヴリー大百科だよ!ほら、君も読んだだろう?」
「ああ読んだ。人懐っこいとも書いてあった。・・・人懐っこいどころか馴れ馴れしいぞこいつ」
「フレンドリーでいいではないかね」
「初対面の人の部屋を占領して寝始める奴だぞ!図々しいとは思わんか」
「だってー、具合悪いのに飼い主は来なくて、しかも島のレイアウトがめっちゃホラーで、ストレス溜まって家出してきたんですもん。モチコマさんはいいって言ってくれましたよ」
返事は布団の中から聞こえてきた。
心底嫌そうな、それでいて力のない声だったが、外郎はふんと鼻で笑う。
「何だ。セントミラノス霊園の壁紙でもかけられたか」
「いいえ、百目壁紙です」
外郎は黙った。善哉も何も言わなかった。
数ある背景アイテムのうちの1つ、百目壁紙の恐ろしさを、彼らは良く知っている。
あれは、数年前の夏の夜。
飼い主の悪戯で、ふと目覚めたらそこは闇だった。
真っ暗な中で視線を感じて振り返ると、壁一面に目があった。数え切れぬほどの黄色い目だった。闇を目蓋に瞬きをしていた。
それが、人ならざるぎょろりとした目が息づくように動き、一点を凝視していた。
自分たちをじっと見つめていた・・・。
「・・・そうか」
外郎は頷いた。
「事情はわかった」
「え」
「寝るならせめて客間へ行け。さもないと容赦なく/evictする」
「え、え。いいんですか」
「ああ。ただし飼い主が戻るまでだ」
角で穏やかになった気配を感じ取ったのか、パズルカタハメはそっと布団から這い出してきた。
カメのように背中に布団を羽織ったまま、しっぽを引きずりおずおずと体勢を変えて正座に戻る。
改めて障子から差し込む光の中で見てみると、パズルカタハメは抵抗に抵抗を重ねていたわりには大人しそうな顔をしていた。角も攻撃的ではないし、行動も案外に素直だ。
遠慮がちな仕草で外郎と善哉の顔を交互に見て、小さく咳をする。
「ええと、カタヌキといいます。しばらく、よろしく」
言って、布団を羽織ったパズルカタハメは頭を下げた。
そのまま口元を押さえて動かなくなり、立て続けにしゃっくりのような咳をし始める。
「おい、大丈夫か。具合が悪いのは本当か」
「嘘はついてません。休めばよくなります。多分」
「騒がせて悪かったがどう考えても貴様も悪い。奥で寝て居ろ、今薬を取ってくる」
言って、外郎は立ち上がった。
カタヌキは顔を上げた。敷布団を運び出す外郎の背中を見て、安心したように小さく笑った。


* * *


開始時間直前、性格を把握しようと図鑑を見たらお布団被ってるようにしか見えませんでした。
そのまま突入行き当たりばったり、楽しかったです。実際の動きでは引っ込まないんですね。
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